◆サヴァリー  1820年製
Jean Nicholas SAVARY (1786-1853), a Paris, 1820
「ファゴットのストラディヴァリ」といわれた19世紀最高の名工、サヴァリのごく初期の作品です。10鍵で、当時の標準的なモデルですが、大きな特徴は、テナー・ジョイントに二つのテューニング・スライドが付いていることで、A=430〜440まで対応します。19世紀初頭は、弦楽器の改良が始まったことから、土地によるピッチの差が大きく、このようなスライドが必要になったと思われます。
甘く、まろやかな音色で、現在のフレンチ・システムのような伸びやかな高音が、特徴です。その声楽的な表現力は、管楽器の理想に極めて近いもので、「死者をも蘇らせる」と形容された霊感に満ちた美音で、その美音故に、20世紀初頭まで、各時代の名手達によって受け継がれ、演奏されました。しかし、2度の大戦を経たためか現存する楽器は少なく、またその中でも演奏可能なものは限られています。